木質構造研究会は1981年に発足し2021年で創立40周年を迎えます。その40年の中で木質構造は大きく進歩をしましたが、その間には1995年の阪神淡路大震災や2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震などの巨大地震に見舞われました。大地震の度に木造建築は甚大な被害にあってきましたが、その多くは新耐震以前に建てられた木造建築であり、現在の基準・技術で建てたられた木造建築はそのような巨大地震の中でもほとんど倒壊していないという事実もあります。本会の目標は「木質構造の技術発展及び普及を目指す」ということです。ここ数年では、特に中大規模木造建築を指向した高強度の木質材料・架構、耐火建築部材が多く登場し、国内外で巨大木造建築物が建築されています。当会の機関紙Journal of Timber Engineeringや技術発表会においてもそれらがトピックとして挙げられることが非常に多くなっています。20世紀の産業革命以降、地球環境は悪化していく一方ですが、その中で木造建築の増加は特に二酸化炭素の排出量の低減に大きく貢献していると言えます。ただ、木造建築が増加するだけでなくその裏には適切な森林の維持管理が必要であり、今後は他学会とも連携して地球環境問題の解決に努める必要があります。
2020年はコロナウイルス感染症により我々の生活様式に大きな影を落としました。対面式の企画や交流会は中止を余儀なくされ、当研究会の企画もやむを得ず見送ったものもございます。しかし、そのような環境の変化にも柔軟に対応し、2020年は第162回の研究会企画、第24回技術発表会をオンラインで開催いたしました。そして、今後もオンラインでの企画を続々と開催する予定です。このことは負の側面だけでなく、これまでは参加しづらかった遠方の参加者も手軽に参加できるようになったという正の側面もございます。
このように21世紀はITなどの先端技術を活用することで生産性向上と環境負荷低減を推進していくことが重要であると考えております。木質構造に関わる、林業、製材、木質材料の製造、建築の設計、プレカット、建て方などあらゆる現場で生産性を高め、かつ環境負荷を低減することが実践され、世代を超えて継承されていくことが目標である、と言えます。今後とも木質構造研究会では木造業界の発展に向けて邁進していく所存ですので、会員の皆様のご支援を賜りますようどうぞよろしくお願いいたします。
木質構造研究会 会長 稲山正弘